Regeneron、23andMeを2億5600万ドルで買収へ:遺伝子データとプライバシーの行方

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2025年5月、米バイオ医薬品大手のRegeneron Pharmaceuticalsは、遺伝子検査企業23andMeを2億5600万ドルで買収する意向を発表しました。この買収は、23andMeが破産申請を行った後の競売によるもので、同社の約1500万人の顧客から収集された遺伝子データベースも含まれています。

本記事では、この買収の背景、23andMeのデータ漏洩問題、そして今後のプライバシー保護の課題について、具体的な事例や引用を交えて解説します。

1. 23andMeの崩壊とRegeneronの買収提案

1-1. 23andMeの破産とデータ漏洩

2023年10月、23andMeは約700万人の顧客データが漏洩する大規模なセキュリティ侵害を公表しました。攻撃者は、他のサービスから流出した認証情報を利用してアカウントに不正アクセスし、DNA親族機能を通じて他のユーザーの情報にもアクセスしました。

この事件により、同社は数千万ドルの和解金を支払い、顧客の信頼を大きく損ないました。2025年3月には、財務状況の悪化とデータ漏洩の影響から破産を申請し、CEOのアン・ウォジツキ氏も辞任しました。

1-2. Regeneronの買収提案

Regeneronは、23andMeの遺伝子検査サービスと研究部門、そして1500万人以上の顧客データを含むバイオバンクを2億5600万ドルで買収する契約を締結しました。ただし、23andMeの遠隔医療部門であるLemonaid Healthは買収対象外となっています。

この買収は、Regeneronの遺伝子情報を活用した創薬研究を強化する戦略の一環とされています。

2. プライバシーと倫理的懸念

2-1. 顧客データの取り扱い

Regeneronは、23andMeの既存のプライバシーポリシーと関連法規を遵守すると公表しています。また、独立した裁判所任命のプライバシー監督官と協力し、顧客データの使用目的やセキュリティ対策について透明性を確保することを約束しています。

2-2. 顧客の懸念と対応

23andMeの顧客データが新たな所有者の手に渡ることに対し、複数の州の司法長官が懸念を表明し、ユーザーに対してデータの削除を推奨しています。

3. 今後の展望と課題

3-1. 創薬研究への影響

Regeneronは、23andMeの遺伝子データを活用して新薬の開発を加速させる計画です。これにより、個別化医療の進展が期待されますが、データの倫理的使用と顧客の同意が重要な課題となります。

3-2. プライバシー保護の強化

過去のデータ漏洩事件を踏まえ、Regeneronは高度なセキュリティ対策とプライバシー保護の強化が求められます。特に、顧客が自身のデータに対してどのような権利を持つのか、明確なガイドラインの策定が必要です。

Regeneronによる23andMeの買収は、遺伝子データの活用とプライバシー保護のバランスを問う重要な事例です。今後、企業は顧客の信頼を維持しつつ、倫理的かつ法的に適切なデータの取り扱いを行うことが求められます。