2025年、エンタープライズ向けワークフロー管理プラットフォームを提供するServiceNowは、AI分野での競争力を高めるため、2つの戦略的買収を発表しました。5月にはデータカタログとガバナンスのプラットフォームであるData.Worldを、3月には従業員向けAIアシスタントを開発するMoveworksを買収することで、ServiceNowはAI駆動型の業務自動化をさらに強化しようとしています。
1. Data.Worldの買収：AIに適したデータ基盤の構築
1-1. Data.Worldとは
Data.Worldは、2015年に設立されたオースティン拠点の企業で、クラウドネイティブなデータカタログおよびデータガバナンスプラットフォームを提供しています。同社は、SiemensやAssociated Press、Norwegian Cruise Linesなどの顧客を持ち、企業のデータ資産を整理し、検索可能にすることで、AI導入の基盤を整備しています。 (crn.com)
1-2. 買収の背景と目的
ServiceNowのデータ分析担当SVPであるGaurav Rewari氏は、「AIの楽園への道は、データの地獄を通る」と述べ、AI導入には整備されたデータ基盤が不可欠であると強調しています。Data.Worldの技術は、企業がデータを整理し、AIエージェントが効果的に活用できるようにするための鍵となります。
1-3. Workflow Data Fabricとの統合
ServiceNowは、Workflow Data Fabricという統合データレイヤーを提供しており、Data.Worldの買収により、リアルタイムで安全なデータアクセスを実現し、AIエージェントやワークフローの精度と効率を向上させることを目指しています。 (crn.com)
2. Moveworksの買収：対話型AIによる従業員体験の革新
2-1. Moveworksとは
Moveworksは、2016年に設立されたカリフォルニア州マウンテンビュー拠点のAI企業で、自然言語処理（NLP）と機械学習を活用した従業員向けAIアシスタントを提供しています。同社のチャットボットは、SlackやMicrosoft Teams、ServiceNowなどのプラットフォームと統合され、従業員の問い合わせやリクエストに自動で対応します。 (en.wikipedia.org)
2-2. 買収の詳細と意義
ServiceNowは、Moveworksを28.5億ドルで買収することで、AI駆動型の従業員サポートを強化し、企業全体の生産性向上を図っています。この買収により、ServiceNowは、自然言語による対話型AIをプラットフォームに統合し、従業員が直感的に情報を取得し、タスクを完了できる環境を提供します。
2-3. エンタープライズ検索と自己解決の強化
Moveworksの技術は、従業員が必要な情報を迅速に検索し、自己解決できるようにすることで、IT部門や人事部門の負担を軽減します。ServiceNowは、これにより、従業員体験の向上と業務効率の改善を実現しようとしています。
3. Agentic AI戦略の全体像と今後の展望
3-1. Agentic AIとは
Agentic AIとは、目標指向型のAIエージェントが自律的にタスクを実行し、業務プロセスを最適化するアプローチです。ServiceNowは、Data.WorldとMoveworksの買収を通じて、データの整備と対話型AIの強化を図り、Agentic AIの実現を加速しています。
3-2. 今後の展望
ServiceNowは、AIエージェントの開発と統合を進めることで、企業の業務自動化とデジタルトランスフォーメーションを推進しています。今後は、CRMやカスタマーサービスなどの分野にもAIを展開し、全社的なAI活用を目指しています。
ServiceNowのData.WorldとMoveworksの買収は、AI駆動型の業務自動化と従業員体験の革新を目指す戦略的な一歩です。データの整備と対話型AIの強化により、企業はより効率的で柔軟な業務運営が可能となります。今後、ServiceNowがどのようにこれらの技術を統合し、企業のデジタルトランスフォーメーションを支援していくのか、注目が集まります。