IBM、Seek AIを買収し、ニューヨークにAIアクセラレーター「Watsonx AI Labs」を開設

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2025年6月2日、IBMは、自然言語で企業データを検索・分析できるAIプラットフォームを提供するスタートアップ「Seek AI」の買収を発表しました。同時に、ニューヨーク市マンハッタンに新たなAIアクセラレーター「Watsonx AI Labs」を開設することも明らかにしました。この動きは、IBMが企業向けAI分野でのリーダーシップを強化し、ニューヨークをAIイノベーションの中心地として位置づける戦略の一環とされています。

1. Seek AIとは何か?

1-1. 創業と技術の概要

Seek AIは、2021年にサラ・ナジー氏によってニューヨークで設立されました。同社のソフトウェアは、ユーザーが自然言語で質問することで、企業データベースから情報を取得し、分析・要約を行うことができます。このチャットボットのようなインターフェースは、特別な技術知識がなくてもデータにアクセスできる点で、多くの企業にとって魅力的です。

1-2. 資金調達と成長

買収前、Seek AIは、Battery Ventures、Conviction Partners、NJP Venturesなどから約1,000万ドルの資金を調達しており、eコマース、金融サービス、消費財などの業界で顧客基盤を拡大していました。

2. IBMの戦略的買収とWatsonx AI Labsの設立

2-1. 買収の背景と目的

IBMは、企業向けAI分野での投資を強化しており、今回のSeek AIの買収もその一環です。同社の2025年第1四半期の収益は、予想を上回り、ソフトウェアの成長とAIへの強い需要がその要因とされています。

2-2. Watsonx AI Labsの概要

Watsonx AI Labsは、IBMの新たなAIアクセラレーターであり、ニューヨーク市のOne Madisonに設立されました。この施設は、IBMの研究者やエンジニア、スタートアップが協力してAIソリューションを開発する「コラボレーティブ・ハブ」として機能します。また、地元の大学や研究機関との連携も目指しています。

3. Seek AIの技術がWatsonx AI Labsにもたらすもの

3-1. 自然言語処理によるデータアクセスの革新

Seek AIの技術は、自然言語でのデータクエリを可能にし、企業がデータをより直感的に活用できるようにします。これにより、データ分析の専門知識がなくても、ビジネスユーザーが自らの質問に対する答えを迅速に得ることが可能となります。

3-2. エージェント型AIの発展

IBMは、エージェント型AIの開発を重視しており、Seek AIの技術はその基盤となります。エージェント型AIとは、複数のタスクを自律的に遂行するAIであり、企業の業務効率化や意思決定支援に貢献します。

4. ニューヨーク市がAIイノベーションの中心地に

4-1. 多様な人材とスタートアップの集積

ニューヨーク市には、2,000以上のAIスタートアップが存在し、AI関連の労働力は、2022年から2023年にかけて約25%増加しました。また、2019年以降、1,000以上のAI関連企業が270億ドル以上の資金を調達しています。

4-2. 地元経済への影響

Tech:NYCのCEOであるジュリー・サミュエルズ氏は、「IBMの今回の動きは、地元のテックセクター、コミュニティ、労働力、経済にとって大きな勝利です」と述べています。IBMは、ニューヨーク市の多様な人材と起業家精神に投資することで、AIイノベーションを加速させることを目指しています。

5. 今後の展望と影響

5-1. スタートアップへの支援と投資

Watsonx AI Labsでは、成功したスタートアップに対して、IBMのリソースへのアクセスや、IBM Venturesおよび5億ドルのエンタープライズAIファンドからの投資の可能性が提供されます。これにより、新たなAIソリューションの開発と市場展開が促進されることが期待されます。

5-2. 企業向けAIの進化

Seek AIの技術とIBMのリソースが組み合わさることで、企業向けAIソリューションの高度化が進むと考えられます。特に、自然言語処理やエージェント型AIの分野での革新が期待され、企業のデータ活用や業務効率化が一層進むでしょう。

IBMによるSeek AIの買収とWatsonx AI Labsの設立は、企業向けAI分野における同社の戦略的な一手です。ニューヨーク市をAIイノベーションの中心地と位置づけ、多様な人材とスタートアップとの協力を通じて、次世代のAIソリューションの開発が進められることが期待されます。今後の展開に注目が集まります。