米国のオンライン証券会社Robinhood(NASDAQ: HOOD)は、2025年5月13日、カナダの暗号資産(仮想通貨)企業WonderFi Technologies Inc.(TSX: WNDR)を約2億5,000万カナダドル(約1億7,900万米ドル)で買収することを発表しました。この買収は、Robinhoodがグローバルな暗号資産市場への進出を加速させる戦略の一環であり、同社の国際的なプレゼンスを強化する重要なステップとなります。
1. 買収の概要と背景
1-1. 買収の詳細
Robinhoodは、WonderFiの全発行済み普通株式を1株あたり0.36カナダドルの現金で取得することで合意しました。この価格は、買収発表前日の終値に対して約41%のプレミアムを提供するものです。買収総額は約2億5,000万カナダドルに達し、取引は2025年後半に完了する予定です。
1-2. WonderFiの事業内容
WonderFiは、カナダの主要な暗号資産取引プラットフォームであるBitbuyとCoinsquareを運営しており、これらのプラットフォームは合わせて21億カナダドル以上の顧客資産を保有しています。また、暗号資産のステーキングサービスや決済プラットフォームSmartPay、カストディサービスのTetra Trustなど、多岐にわたるサービスを提供しています。(wonder.fi)
2. Robinhoodのグローバル戦略
2-1. Bitstampの買収
今回のWonderFi買収に先立ち、Robinhoodは2024年6月に欧州の暗号資産取引所Bitstampを2億米ドルで買収することを発表し、2025年6月に取引を完了しました。Bitstampは、50以上の国際的なライセンスを保有し、欧州、英国、米国、アジアに顧客基盤を持つ老舗の取引所であり、Robinhoodの国際展開を大きく後押しする存在となっています。
2-2. カナダ市場への進出
Robinhoodは2024年にトロントにカナダ本社を設立し、インフラストラクチャーエンジニアリングの拠点として活用しています。今回のWonderFi買収により、カナダ市場でのプレゼンスをさらに強化し、現地の技術人材を活用したサービス展開が期待されます。
3. 買収の意義と影響
3-1. 暗号資産市場への本格参入
RobinhoodのCEOであるVlad Tenev氏は、「暗号資産は金融システムの基盤を変革する次なる技術革新であり、当社のミッションと一致する」と述べています。今回の買収により、Robinhoodは暗号資産市場への本格的な参入を果たし、個人投資家だけでなく機関投資家向けのサービス提供も視野に入れています。
3-2. カナダ市場での競争力強化
WonderFiのBitbuyとCoinsquareは、カナダで最も規模の大きい規制された暗号資産取引プラットフォームであり、合わせて150万人以上の登録ユーザーを抱えています。これらのプラットフォームを傘下に収めることで、Robinhoodはカナダ市場での競争力を大幅に強化することが可能となります。
3-3. グローバルな金融エコシステムの構築
Robinhoodは、株式取引アプリから総合的な金融サービスプラットフォームへの進化を目指しており、暗号資産取引、オプション取引、資産管理サービスなど、多岐にわたるサービスを展開しています。今回の買収は、その戦略の一環として位置づけられ、グローバルな金融エコシステムの構築を加速させるものです。
4. 今後の展望
WonderFiのCEOであるDean Skurka氏は、「Robinhoodと共に、より多くの人々に暗号資産へのアクセスを提供し、製品の提供を強化していくことを楽しみにしている」と述べています。買収完了後も、WonderFiのブランドとプラットフォームは引き続き運営され、既存の顧客に対するサービス提供が継続される予定です。
また、Robinhoodは今後も暗号資産関連の買収を検討しており、グローバルな市場での存在感をさらに高めていく方針です。これにより、同社は個人投資家だけでなく、機関投資家向けのサービス提供も強化し、総合的な金融サービスプロバイダーとしての地位を確立していくことが期待されます。
RobinhoodによるWonderFiの買収は、同社のグローバルな暗号資産戦略を加速させる重要なマイルストーンとなります。カナダ市場でのプレゼンス強化、機関投資家向けサービスの展開、そして総合的な金融エコシステムの構築に向けた取り組みが、今後の同社の成長を支える鍵となるでしょう。