イーロン・マスク氏が率いるNeuralinkは、脳とコンピューターを直接接続するブレイン・コンピューター・インターフェース(BCI)技術の開発を進めています。2025年6月、同社はシリーズEラウンドで6億5000万ドルの資金を調達し、企業評価額は90億ドルに達しました。この資金調達は、同社の技術開発と臨床試験の加速を目的としています。
1. 資金調達の概要と主要投資家
NeuralinkのシリーズEラウンドには、ARK Invest、Founders Fund、Sequoia Capital、Thrive Capitalなどの著名な投資家が参加しました。これらの投資家は、Neuralinkの技術的進歩と将来性に注目し、資金提供を行っています。今回の資金調達により、同社の企業評価額は90億ドルに達し、前回の評価額から大幅に増加しました。
2. 臨床試験の進展と患者への応用
2-1. 臨床試験の実施状況
Neuralinkは、重度の麻痺を持つ5人の患者に対して、同社のBCIデバイス「Telepathy」の臨床試験を実施しています。これらの患者は、思考によってデジタルデバイスや物理的な装置を制御することが可能となりました。臨床試験は、米国、カナダ、アラブ首長国連邦の3か国で行われています。 (ibtimes.co.uk)
2-2. 患者事例:Noland Arbaugh氏
2024年1月、Neuralinkは最初の人間へのインプラント手術を実施し、Noland Arbaugh氏がその対象となりました。彼は2016年の事故で四肢麻痺となりましたが、Neuralinkのデバイスを用いて思考によるコンピューター操作が可能となり、ウェブ閲覧やゲームプレイなどを行っています。 (ibtimes.co.uk, theguardian.com)
2-3. 患者事例:Brad Smith氏
2025年4月、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患うBrad Smith氏が、Neuralinkのインプラント手術を受けました。彼は言葉を話すことができませんでしたが、デバイスを通じて思考によるカーソル操作が可能となり、メッセージの作成や動画編集を行うことができるようになりました。 (nypost.com)
3. FDAの「Breakthrough Device」指定と技術的進展
3-1. FDAの指定
Neuralinkは、視覚回復デバイス「Blindsight」と音声回復デバイスにおいて、米国食品医薬品局(FDA)から「Breakthrough Device」指定を受けました。この指定は、革新的な医療機器の開発と承認を加速するためのものであり、Neuralinkの技術が高く評価されていることを示しています。
3-2. 技術的進展
NeuralinkのBCIデバイスは、脳内のニューロンからの信号を高精度で読み取り、デジタルデバイスの制御に利用することが可能です。また、同社は視覚や音声の回復を目的としたデバイスの開発も進めており、将来的には脳とコンピューターの直接的な接続による新たなコミュニケーション手段の提供を目指しています。
4. 競合他社との比較と業界の展望
Neuralinkの競合として、ParadromicsやSynchronなどの企業が存在します。Paradromicsは、2025年5月に初の人間へのインプラント手術を成功させ、臨床試験への移行を進めています。同社のデバイスは、高速なデータ転送と耐久性を特徴としており、Neuralinkとの差別化を図っています。 (interestingengineering.com, wired.com)
Neuralinkは、BCI技術の開発と実用化において大きな進展を遂げています。今回の資金調達により、同社は臨床試験の拡大と新たなデバイスの開発を加速することが期待されます。今後、Neuralinkの技術が医療分野や人間の能力拡張にどのような影響を与えるのか、引き続き注目が集まります。(interestingengineering.com)