DoorDash、DeliverooとSevenRoomsを買収:グローバル戦略とプラットフォーム拡張の全貌

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2025年5月、米国のフードデリバリー大手DoorDashは、英国の競合企業Deliverooを約29億ポンド(約38.6億ドル)で、さらにホスピタリティテック企業SevenRoomsを12億ドルで買収することを発表しました。これらの動きは、DoorDashの欧州市場への進出と、フードデリバリーにとどまらないサービスの多角化を示しています。

1. Deliveroo買収:欧州市場への本格参入

1-1. 買収の概要と背景

DoorDashは、Deliverooの株式を1株あたり180ペンスで取得することで合意しました。これは、買収提案前の株価に対して約29%のプレミアムを提供するものです。この取引により、DoorDashは英国、アイルランド、フランス、イタリア、ベルギー、シンガポール、アラブ首長国連邦、クウェート、カタールなど、Deliverooが展開する9つの新市場に進出することになります 。(thetimes.co.uk, apnews.com)

1-2. シナジーと市場戦略

DoorDashのCEOであるトニー・シュー氏は、「DeliverooとDoorDashが一緒になることで、英国だけでなく世界中で素晴らしい成果を上げることができると確信しています」と述べています 。両社の統合により、DoorDashは欧州市場での競争力を高め、Just EatやUber Eatsなどの競合他社に対抗する体制を整えることができます。

1-3. 雇用と組織への影響

この買収により、Deliverooのロンドン本社は維持され、既存の労働組合との合意も尊重される予定です。ただし、バックオフィス業務を中心に最大830人の雇用が影響を受ける可能性があり、両社は自然減や採用抑制を通じて人員削減を最小限に抑える方針です 。

2. SevenRooms買収:ホスピタリティ分野への進出

2-1. SevenRoomsとは

SevenRoomsは、レストランやホテル向けに予約管理、CRM、ゲスト管理などのソフトウェアを提供するニューヨーク拠点の企業です。同社のプラットフォームは、MGMリゾーツ、マリオット・インターナショナル、アコーグループ、ウィン・リゾーツ、ハイアットなど、約13,000の顧客に利用されています 。

2-2. 買収の目的と展望

DoorDashは、この買収により、レストラン予約、CRM、ゲスト管理機能を自社のB2Bコマースプラットフォームに統合し、フードデリバリー以外の収益源を多様化することを目指しています。同社の戦略・オペレーション担当副社長であるパリサ・サドルザデ氏は、「SevenRoomsを通じて、世界中の地元企業に新たな方法でゲストを迎え入れ、顧客との直接的な関係を築き、CRMを活用し、よりスマートなマーケティングで収益性を向上させることができます」と述べています 。(ir.doordash.com)

3. 業界への影響と今後の展望

3-1. フードデリバリー市場の再編

近年、フードデリバリー業界は競争が激化し、消費者の行動変化や資金調達環境の変化により、多くの企業が再編を迫られています。DoorDashの今回の買収は、業界内での生き残りをかけた動きの一環といえます。

3-2. 規制と承認プロセス

Deliverooの買収は、株主の75%の承認と規制当局の承認が必要です。現在、DoorDashはDeliverooの株式の15.4%について支持を得ており、最大株主であるAmazon(14.38%保有)の動向が注目されています 。一方、SevenRoomsの買収は、2025年後半に完了する予定であり、規制当局の承認が必要です。

DoorDashによるDeliverooとSevenRoomsの買収は、同社のグローバル展開とサービス多角化の重要なステップです。これにより、DoorDashはフードデリバリー市場での競争力を強化し、ホスピタリティ分野への進出を果たすことになります。今後、これらの統合がどのようなシナジーを生み出し、業界全体にどのような影響を与えるのか、注目が集まります。